はじめに
ここでは記録映画『札差 御蔵前泉屋』製作の舞台裏をお見せしようと思います。
札差の菩提寺リストと丹羽家墓所の発見、「蜻蛉の道艸」「雑々集」との出会い、「近江松尾」の現在地の解明‥‥札差をテーマとしその具体像を探る過程は、そうした成果(取材の成果とその過程)を生み出すための基礎的な情報収集を前提としていました。
データ入力
左の図は、筆者のパソコン上に設置した「蔵前」という名のフォルダの中身です。平成4年9月5日に作成したもので、さまざまなデータを入れておくための容器ということになります。
その中の「蔵前・調査」というフォルダの中が下の図です。図中の左上にある「蔵前・札差リスト」が最初に作成したデータファイルでした。
321名の札差データ
まずこの「蔵前・札差リスト」に、さまざまな文献や資料に記述された札差についての情報を入力していきます。北原 進『江戸の札差』から読み始めて、幸田成友「札差雑考」(『日本経済史研究』所収)、その他もろもろの資料で目に付いた札差の名と情報を記録し、最終的には不可解なものも含め321名の札差データを収録しました。ただし、その頃はまだ菩提寺についての情報はありませんでした。
一橋大学
札差史料所蔵の点でメッカとも言える場所があります。取材や撮影で何度か訪れた一橋大学です。収蔵史料の一つ「御蔵御場所見回組合割付」に札差の菩提寺が記されているという記述を先の「札差雑考」の文中に見つけました。そこで大学の許可を得て原本を閲覧し、関連データを入力したのが下の表です(計101名)。